ほっちゃん_happyブログ

経験40年以上の現役一級建築士の"happy"提言

寅さんが教えてくれる幸せな生き方

ああ、きょうもいい天気

寅さんといえば、言わずと知れた日本映画の代表的なシリーズ。国民的な人気を誇る作品です。寅さんは、出会った女性に一目惚れをし、すぐにふられます。故郷の柴又に帰ってきたかと思えば、些細なことで、おいちゃんやおばちゃん達と大げんかになり、その勢いでまた旅に出て行く。そんなことを飽きもせずに繰り返す、おなじみの物語です。寅さんはどうしようもない男として描かれています。ですが、そのどうしようもない男であるはずの寅さんが、いつも、ほんとうの「しあわせ」とは、「こういうもんだよ」と教えてくれます。映画を見ているうちに、いつのまにか自分が寅さんと同化して、しみじみと幸福感を味わっている。そして、映画を見終わったあと、なんともいえない,温かい気持ちが尾を引くのです。きょうは、寅さんの幸福感について書いてみます。

コロナという、とんでもないパンデミックからやっと解放されたというのに、意外なことに、「ほんとうの幸せとは何だろう? これからなにをしたらいいのだろう?」と思い悩んでいるひとが多いと聞きます。

  • 人と会うのがこわい
  • 感情のコミュニケーションがうまくいかない

なにもできない、なにもしてはいけない,苦しいコロナの3年間が、わたしたちの生活習慣を、大きく変えてしまったのでしょうか? コロナのせいで、スマホ依存症が、いっそう蔓延しているように感じます。

わたしは以前、異様な光景を目にしたことがあります。
愛犬のリリを連れて、いつものように公園に行ったときのことです。公園の中心に噴水があって、リリは、そこの腰掛けに上がって、デンと座るのが大好きでした。その日も、そうしようとして歩いて行くと、噴水のまわりは、いつもよりたくさんの人がいて、なんだか異様な雰囲気が漂っていました。みんな、申し合わせたように下を向いて、手元を見ながら、無言でフラフラと歩いているのです。犬を連れているのはわたしだけでした。ギョッとしました。しかし、すぐにそれはスマホのせいだと分かりました。こんなにいっぱい人が集まっているのに、だれひとりとして会話するわけでなく、付近には妙な静寂が漂っていました。驚きました。まるで、ゾンビの集団です。

わたしもスマホは持っていますが、細かい操作が苦手で、あまり使いません。かかってきた電話にも出ないことがあったりして、いまでは、めったに電話もかかってきません。そんなこと、自慢にもなりませんが、それで困るかというと、ぜんぜん困らない。

あのときの、まるでゾンビの集団に遭遇したような体験は、いまでも鮮明に思い出すことができます。きっと、「ポケモン」の、なんとかいうモンスターが,その噴水付近でゲットできたのでしょう。それは、流行現象として分かるのですが、どう見ても、あれは幸せな姿には見えません。ゲームは楽しいのかもしれませんが、それは、ほんとうの幸せなのでしょうか。余計なお世話かもしれませんが、気になるのです。
どうして、こんなことになってしまったのだろう?

「災い転じて福となす」ということわざがあります。コロナから解放されたいまこそ、ほんとうの幸せとは何なのか、改めて考えてみるときなのかもしれません。

寅さんが教えてくれる幸せな生き方は、次の3つのポイントにまとめられます

1.自分の好きなことをする

寅さんは、自分の好きなことをするために、いつも旅に出ています。旅先では、新しい出会いや発見があり、そのたびにつまづいたり、立ち直ったりして自分の世界を広げていきます。寅さんは、自分の興味や好奇心を大切にしており、それが彼の生きがいになっています。

自分の好きなことをする。
ゲームが好きなら、それはそれで、ちっとも構わない。ちなみに、寅さんはゲームはしません。競馬で大もうけして、名古屋から柴又までタクシーで帰ってきて、おいちゃんとおばちゃんをハワイに連れて行こうとしたりしますが、ギャンブル好きでもありません。寅さんの関心の的はいつも人間です。

では、なぜ好きなことができないのでしょうか?
理由は3つくらいあります。

  • 好きなことをする時間もお金もない
  • 好き勝手なことをすれば、周囲の目が気になる
  • 無趣味で好きなことが見当たらない

どれもこれも、もっともな意見ですが、しかし、よくよく考えてみれば、なんだかんだと理屈をつけて逃げているだけではないでしょうか?

  • 時間はつくるもの
  • お金はかけなくてもいい
  • 周囲に目など気にしなくていい
  • だれもあなたのすることに注目なんかしていない
  • 無趣味なら、とりあえず、近場でぼっちキャンプをしてみたらどうでしょうか?
  • 思い切って、スマホから遠ざかってみる
  • ヒントは無限にあります

スマホから遠ざかってみるには、つぎのような方法があります。

  • スマホの使用時間を記録するアプリや機能を利用する
  • スマホの通知や音をオフにする
  • スマホを使わない時間帯や場所を決める
  • スマホ以外の趣味や人間関係を充実させる

スマホではほんとうの顔が見えません。スクリーンに写し出された画像や、スピーカーから聞こえてくる音声は、ほんとうの顔でも声でもありません。あくまで仮想のモノでしかすぎません。面と向かって伝えることとは雲泥の差があります。
好きなことが見つかれば、生活にメリハリができて、毎日がいきいきと輝いてきます。
例えばキャンプをするとしたら。

  • どこに行く?
  • どんなテントにする?
  • 食べ物は何を持って行く?
  • 調理器具はどうする?
  • たき火は?

ちょっと考えただけで、頭のなかは「?」マークでいっぱいになります。計画をはじめたとたん、わくわく,ドキドキの連続。それはまさに「幸せ」の瞬間です。

まずはいろいろなことに挑戦してみることです。

  • 趣味
  • スポーツ
  • 勉強
  • ボランティア
  • リスキリング

など、探せば自分に合ったものが必ずあるはず。自分の好きなことをすることで、自分の能力や魅力を発揮できるだけでなく、同じ趣味を持つ人たちと交流する機会も増えます。くよくよしている時間なんてなくなります。いったんうごきはじめたら、「慣性の法則」がはたらいて、さらに楽しみや充実感が加算されていきます。いったんうごきだしたものは、なかなか止めるのが難しくなるのです。

寅さんが、年がら年中、旅に出て、日本全国あちこちをさまよい歩くのは、キャンプの楽しさの延長線上にあるのかもしれませんね。さすがにキャンプばかりしてると、飽きることもあるので、そんなとき、寅さんはふらりと故郷、柴又に帰ってきます。柴又で束の間の充電をし、大げんかをし、その「大げんか」がスイッチになって、再び旅へと出て行く。そんなことを繰りかえしながらも、寅さんは決して妥協はしません。「旅」という、自分の好きなことをやり通すのです。

2.人とつながる

寅さんは、旅先でも故郷でも、人とつながることが大好き。旅先では、出会った女性に恋をするだけでなく、その女性の家族や友人、地域の人たちとも仲良くなります。故郷では、おばちゃんやおいちゃん、さくらや博やマドンナなど、家族や友人たちと和気あいあいとバカを言い合いながら暮らしています。寅さんは、人とつながることで、支えられたり助けられたりするだけでなく、支えたり助けたりすることもできます。寅さんは、人とつながることで、愛される喜びや愛する喜びを感じています。

寅さんは人見知りなんかしません。どんどん人とつながります。あっという間に仲良くなります。それは寅さんが、だれにも好かれ慕われる、持って生まれた魅力的な性格だから。早とちりや勘違いから,いっぱい失敗もし,大騒動を引き起こします。でも、寅さんは、裏も表もない憎めない性格。いつのまにか、みんな、寅さんを許してしまうのです。

寅さんではない、わたしたちは、なかなかそうはいきませんね。
一度失敗すると、なかなか許してもらえないのが現実の厳しい世界。だから、つい、ややこしい人には近づかないようにしてしまう。「君子危うしに近寄らす」というわけですね。だから、いつまでたっても、本音で人とつながることができません。いつのまにか,スマホに依存するようになっていきます。

人と心のつながりを持つには、いくつかの方法があります。例えば、以下のようなことが挙げられます。

  • 相手の良いところを見つける
  • ハートをオープンにして人と接する
  • とにかく何でも話す
  • 自分の失敗談をさらけ出す

外国人のように、自分の考えや感情をポンポンと口に出しても、ひびが入らない信頼関係が理想ですよね。日本人は、相手を気づかったり、遠慮したりで、思ったことをそのまま口に出すことをためらいます。それが、奥歯にものが挟まったようになって、かえって誤解を招くことがあったりすると、トラウマになり、ますますなにも言えなくなります。フランクでいながら、相手を尊重する関係を築きたいと思うのは、誰しも抱く願望でしょう。
人とつながることで、自分の存在意義や価値を認められるだけでなく、他人の存在意義や価値を認めることもできます。そうすることで、あたたかで豊かな感情表現ができるようになります。シャイな日本人同士なら、ほんの少しの気配りさえあれば、ちゃんと通じます。それだけで、とても幸せな気分になれるのです。

3.変化を恐れない

寅さんは、なにがあっても変化を恐れません。カメレオンのように、どんどん自分を変えていきます。旅館の番頭さんや、お寺のお坊さんに変身したり、自由自在。寅さんは、旅先で出会った女性に恋をして、失恋し、そのたびに蘇り、柔軟に変化していきます。寅さんは、自分の恋が成就しなかったり、時代が変わったりすることに対して、悲観したり怒ったりすることはあっても、結局は受け入れます。寅さんは、失恋の痛手を乗り越え、新たな気持ちで旅へと出て行きます。寅さんは、変化を恐れず、つぎからつぎへと旅に出かけるのです。

変化を恐れないことで、幸せな生き方をすることができます。
変化を恐れないためには。

  • 自分に自信を持つこと
  • 自分の長所や強みを認識すること
  • 自分の過去の成功体験や挑戦体験を思い出したりする

自分に自信を持つことで、変化に対して不安や恐怖ではなく、興味や期待を持つことができます。変化を恐れないことで、自分の成長や発展につながることも多くあります。

もちろん、寅さんの生き方は万人に当てはまるものではありません。寅さんの生き方はあくまでも「映画」であり、ほんとうの幸せは人それぞれ違うものです。幸せな生き方をするために、ほんとうは何を求めているか? 自分自身に正直になってみなければ、その答えは出てきません。

最後に、わたしの失敗談をお話しします。

もう30年以上も前のことになります。上司とギクシャクして悩んでいたわたしは、思い切って休暇願を出して、東京へ撮影旅行をすることにしました。その休暇の理由として、「自分を見つけてきます」と書きました。いま思いかえしても、顔から火が出るような思いがします。その上司は、わたしの青臭い休暇の理由を見て、フン,と笑ったようでしたが、なにも言わずに3日間の休暇をくれました。

その頃、わたしは一眼レフにこっていて、レンズも何本も持っていました。せっかくの東京行き、ステキな写真をいっぱい撮ってやろうと、目一杯の機材をバッグに詰めこみ、空港に到着。しかし、いきなり、わたしのパンパンに膨らんだバッグは人目を引き、荷物検査でつかまってしまいました。なんとか荷物検査をパスし、機上の人となりましたが、先が思いやられます。

重い荷物を抱えて、やっとのことで新宿のホテルにたどり着いたときはもうとっぷりと日が暮れていました。ホテルで夕食を済ませ、わたしは部屋の窓から夜の新宿の街を撮りまくりまくったことをよく覚えています。
あとになって、その写真を見かえしてみると、撮影意図のはっきりしない凡作ばかりで、がっかりしてしまいました。

3日間の休暇は、あっという間にすぎ、わたしはもう、羽田空港の待合室に。途中で搭乗ゲートが変更になったりして、移動はしましたが、あとは時間を待つだけ。ところが、いつになっても、わたしの搭乗便のアナウンスはありません。待合室の客がどんどんすくなくなり、とうとう、ひとりになってしまいました。さすがに不安になって案内所に行くと、係の女性達数人が集まって、わたしのチケットを眺めながら首をかしげています。なんらかの異変があったようです。搭乗便はとっくに出て行ってしまっています。係からは何の説明もありませんでしたが、このままここにいてもしょうがないので、近くのホテルを予約してもらいました。

翌日、昼近くになって会社に出勤したわたしは、上司に理由を説明しましたが、納得してもらえませんでした。なぜか、嫌がらせのために、わざと乗り遅れたと思ったようです。
今となっては、真相は明らかではありませんが、苦い思い出です。上司との関係は一層まずくなり、やがて、リストラへとつながっていきます。
わたしの「自分探しの旅」は、ほろ苦い結末をもって終了し、寅さんのように、自由気ままに、のびのびとふるまうことは叶いませんでした。当時のわたしは、まだ寅さん映画の深い意味を知りません。

わたしの苦い、「自分探しの旅」を「寅さんが教えてくれる幸せな生き方」に当てはめてみましょう。

  1. 自分の好きなことをする
  2. 人とつながる
  3. 変化を恐れない

結果はどうでしょか?

1.ほんとうに写真を撮ることが好きだったのか? 疑問です。ほんとうは写真機材が好きなだけではないか?
2.旅先で会った人と交流するなんて、眼中にありませんでした。
3.上司との葛藤が、カメラを構えていても、ふと浮かんできたりして、結局、気持ちが吹っ切れることはありませんでした。

すべて落第です!

どれもが中途半端で、ひとりよがりでした。
これでは幸せな気持ちになれるわけがありません。
そもそも、旅の目的である「自分探し」ができたのでしょうか?
いいえ。できたどころか、飛行機に乗り遅れるというミステリーまがいのアクシデントに見舞われ、かえって自分を見失う結果になっています。

もしも、いま、「自分探しの旅」をするとしたら、「寅さんが教えてくれる幸せな生き方」を知っているだけに、ぜんぜん違う旅になっただろうと想像できます。

寅さんは欠点だらけの人間です。でも、決して不幸な人間ではありません。
寅さんは、自由に旅をして、いろいろな人と出会って、楽しく生きていきます。でも、寅さんにも苦労や寂しさを感じるときがあります。自分の先行きになんともいえない不安を抱いたりします。それでも寅さんは、自分の幸せを追い求めることを諦めません。


寅さんは、

1.自分の好きなことをする
2.人とつながる
3.変化を恐れない

この3つに、さらに1つ付け加えました。

「人を信じ、裏切らない」
そこに幸せの本質があるのかもしれませんね。