ほっちゃん_happyブログ

経験40年以上の現役一級建築士の"happy"提言

紙の本が大好きな人のための電子書籍活用法

本棚はいつのまにかいっぱいになる

 

 

電子書籍を利用するようになったきっかけ

わたしは大の本好きである。我が家のあちこちには本があふれていて、トイレのなかの棚までギシギシに詰まっている。かつては、捨てても捨てても本が湧いてくる感じだった。捨てる量より買う量の方が多いので減るはずがないのである。

KindleStoreが開設したのは2012年。わたしはその頃からキンドル本を読み始めた。
電子書籍の黎明期には、わたしも電子書籍には懐疑的だった。どこか胡散臭いにおいが漂っていた。

これは『本』ではない。

そんな思いを心のどこかに引っかけながら、ハスに眺めていたような気がする。
しかし、気がつけば電子書籍が紙の本を片隅に押しやってしまっていた。いまでは、購入する本のほぼ100%が電子書籍になっている。

紙の本が嫌いになったわけではない。いまだに大好きである。
ちょうど10年くらい前から、近くにあった書店が次々に消えてしまったことも電子書籍に染まるきっかけになったのかもしれない。

本が捨てられない理由

  1. いつかまた読むかもしれないという思いがぬぐいきれない
  2. 本が並んでいるのを見るのが好き
  3. 感動した本は捨てられない
  4. 読んだ証ししとして残しておきたい

1.いつかまた読むかもしれないという思いがぬぐいされない

読み終えた本でも、途中で読むのをやめた本でも、あとから読みかえすことはよくあることだ。別の本を読んでいるときにふと思い出して、あれはどうだったのか、これはどう解釈すべきなのか、とか、わたしの読書は必ずしも一本道ではなくて、あちらこちらと寄り道することが多い。

ときには後ろのページから前のページへと逆にたどって読むこともある。もちろん一気に読んでしまうことだってある。ページめくりをするようにざっと眺めるだけのときもある。どっちにしても、捨てたりする気にはなれない。

そういうわけで、トイレの棚には1982版の『現代囲碁体系』の全巻が順不同に並んでいて、微塵もうごく気配を見せない。

2.本が並んでいるのを見るのが好き

本好きはみんなそうだ。いろいろな背表紙が並んでいるのを見ると落ちつく。箱はもちろん、帯も剝ぎ取ってしまうし、ときにはカバーも剝ぎ取ってしまう。できるだけ裸の状態で置いておきたいのだ。そのほうが読んだという感じが強くなるような気がする。

ときには縦積みになったりするが、それはそれで悪くはない。まっすぐではなく、ところどころで本同士がもたれあったりする様子も、なんだか可愛げでいとおしい。薄かったり厚かったり、本の高さもカタチもまちまち。ちょっとしたカオス状態になっている。整然と並んでいるより、カオス状態のほうが風情がある。潔癖症の人には耐えられない光景であるかもしれないが。

3.感動した本は捨てられない

これは絶対の法則である。なにもつけ加えることはない。

4.読んだ証しとして残しておきたい

なにを読んだのかすぐに忘れてしまうのが読書好きの得意技でもある。一説によると、忘れなければ覚えることはできないそうだ。忘れたものや忘れかけたものを蘇らせるために残しておくのだ。漫画本は一冊もない。

小説、料理本、ハウツウもの、画集など種類もたくさんある。各種楽譜もいっぱいある。わたしは音楽家ではないが、楽譜を読んでいるだけで楽しくなれるという特技(?)を持っている。

本の形態としては、単行本、雑誌、文庫本、大判物まで雑多である。
いま目の前にある本の山のほかに、捨てた本もたくさんある。いったい、どれほどの知識や情報や楽しみが、わたしのなかを通り過ぎていったのだろうか。
記憶の網の目は年々粗くなっていくようで、だんだん引っかかってくるものが少なくなっていく。それでも読みかえしさえすれば、当時の思いが確実に蘇ってくる。

電子書籍のメリット・デメリットを拾い出してみた

メリット

  1. 場所を取らない
  2. 端末さえあれば、どこでも読める
  3. 整理の必要がない
  4. 文字が拡大できる

デメリット

  1. 見たいページがぱっと開けない
  2. 価格が紙の本とあまり変わらない
  3. においや温かみが感じられない
  4. 紙のほうが記憶に残りやすい

電子書籍を楽しむくふう

電子書籍で投資本などを読むときは端末をふたつ用意しよう。
投資本ではチャートなどの図表がいっぱい出てくる。その解説文が同じページにあればなんの問題もないが、複数のページにわたって解説文が記されているときには、図表のあるページと解説文のページを行ったり来たりすることになり、電子書籍ではその操作がとてもわずらわしくなるし、理解しづらくなってしまう。そんなときに端末がふたつあると劇的に状況は改善する。

ひとつの画面に図表だけを表示し、別の端末でその図表の解説文を読んでいく。図表を見ながら解説を読んでいくスタイルはとても自然で疲れないし、理解もしやすくなる。端末はPC、タブレット、電子書籍リーダーなど、なんでもいいが、わたしはPCとiPadをセットにしている。

電子書籍用の機能はいろいろある

電子書籍の機能

・テキスト読み上げ機能

 料理をしながら聞いたりすることができるので時間の有効利用ができる。

・X-Ray

 本のなかに出てくる主要キーワード(登場人物、用語など)の意味を一覧表示。

 その場所に飛ぶこともできる。

・Word Wise

 洋書専用。難解な単語を簡潔な同義語にしてくれる。

端末に備わっている機能

・カラーモード

 PCのアプリ版Kindleでは文字背景の色を変えることができる。(白、黒、セピア)

・ハイライト

 PCのアプリ版Kindleでは自由にマークをつけることができる。そこにメモを残す  こともでき、編集も可能。

・付箋メモ・ブックマーク

 気になるページに付箋やブックマークをつけ、メモを残すことができる。

・フラッシュカード

 電子書籍のなかにあることばや出来事を単語カードにして学習に使う。

・辞書機能

 ハイライトしたことばを辞書引きすることができる。

・文字拡大機能

 文字の大きさを変えることができる。

注意事項

雑誌などは固定レイアウトのものが多いので注意が必要。固定レイアウトは、ページそのものを画像化しているだけなので、ほとんどの機能が使えなくなる。全体を拡大することはできるが、文字そのものを大きくしたりすることはできないし、ハイライト機能も使えない。写真集など、眺めるだけの目的なら固定レイアウトでも十分楽しめるだろう。

最後にエピソードをひとつ

母が入院していた病院に毎日のように通っていたころのことだ。母はほとんど寝たきりで、わたしの言ったことを聞き取ることはできなかった。ただ、手を握れば、力を返してくれていた。会話がなかったので、わたしはいつもベッド脇の丸椅子に腰掛け、手すりにもたれかかって、母の上に身を乗り出すような格好でiPadのアプリでKindle本を読んでいた。その姿が、看護師さんたちには、病と闘っている母親の写真をiPadで撮りまくっている不謹慎な息子のように見えたらしく、あまりよく思われていなかったようだ。とんでもない誤解である。まいにち一時間も母親の寝顔を撮りつづけるなんて、たしかに変人奇人にちがいない。

しかし、わたしはKindle本を読んでいただけなのだ。
そのことをあとから知ったわたしは驚いたが、タブレットで本を読むという行為には、なんとなく、あやしい雰囲気があるのかもしれない。いまさら人目を気にする柄でもないが、ちょっぴり残念である。

母は99歳で亡くなった。天国で母はどう思っているのだろうか。
法事の席の法話で、仏教では天国とはいわない、極楽なのだと笑い話のようにやんわりと僧侶に諭されたのをふと思い出した。
しかし、わたしには天国のほうがしっくりくる。

電子書籍の今後に期待する

 電子書籍のベースになっているのは紙の本だが、最近は初めから電子書籍として書かれたものも多くなってきている。残念ながら、そのなかには中身がスカスカのものがある。中身を確認するのが難しいのが電子書籍につきまとう宿命でもある。今後の課題として、『立ち読みコーナー』のようなものが必要になるかもしれない。本というものは、紙であれ電子であれ、立ち読みしてそれでおしまいではなく、立ち読みしてもなお買いたくなるようなステキな内容が要求されるのだ。

電子書籍には紙の本のような実感が伴わないので、いっそう高いレベルのものが期待されるだろう。いまでも『サンプルを読む』というサービスがあるが、さらに充実したものを期待したい。

いずれにしても、電子書籍には魅力がいっぱい詰まっているのは間違いない。それを上手に使いこなせたら、人生がもっと豊かになるに違いない。

まとめ

 電子書籍には紙の本にはない魅力がある。上手に使いこなせば役に立つ。
電子書籍でいちばんオススメの機能はX-Rayである。まるでレントゲン写真のように、本の骨格をあぶり出してくれるのだ。この機能を使いこなすだけでも電子書籍を利用する価値がある。

『固定レイアウト』には注意しよう。電子書籍ならではの機能がほとんど使えない。
電子書籍を購入するときには、登録情報を確認しよう。

建築士のひとこと

建築の世界も日進月歩である。建築確認申請も電子化されてはいるが、まだ普及率は40%程度。いまだに紙のほうが優勢なのである。しかし、近い将来に、技術書や法律集なども電子書籍が主流になってくるにちがいない。その日に備えて、いまから準備しても遅くはないと思う。