はじめに
FXに関する入門書は山ほどありますが、そのなかから良質な入門書を選ばなければなりません。なにをもって「良質」とみなすか? とても難しい問題ですが、少なくとも役に立たなければ何にもなりません。FX経験10年あまりのわたしが、役に立ったと思うFX初心者におすすめの入門書を5冊ご紹介します。
この5冊を押さえておけば、途中で道に迷っても、また元の道に戻ることができます。一度読んだらおわり、ではなく、繰り返し読みかえすたびに新しい発見があるでしょう。実践を少しずつ積みながら、修正を加えていくしか、上達の道はありません。それができる人だけが成功するのです。
ちなみに、わたしのFXにおける実績は、たいしたことはありませんが、マイナスにはなっていません。いまだに失敗をします。その度に、この5冊に舞い戻ってくることになりますが、何度読みかえしても、新しい発見があります。FX取引に夢中になっているときは目に入らなかったことを、身にしみて思い知ったりします。正直に白状します。そういう意味ではわたしは「永遠に初心者です」いまだに。
この記事は、初心者といっても、すでにFX取引をはじめていて、成績がいまひとつだし、何かが足りない、もっと本格的に取り組んでみたい、と思いはじめている人に向けて書いています。気軽にはじめてみたものの、行き詰まる。それは、成長の過程でだれもが陥る落とし穴です。そこに落ちて、初めてFXの奥深さに気づいたということで、それは変化のチャンスでもあります。ここで、すこし立ち止まり、しっかり学び直せば、自分を変えることができます。「ビギナーズラック」から、さっさと卒業してしまいましょう。
入門書の選び方のポイント
- 信頼できる著者や出版社の本を選ぶ
- 自分のレベルや目的に合った本を選ぶ
- 入門書だけでなく、テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析、資金管理、心理学などの本も読む
- 人目に引くタイトルに気をつけること
- 聖杯はありません
FX初心者におすすめの入門書5冊
入門書とはいっても、FXのことをまったく知らない人に向けた本ではありません。道に迷った人のための、入門書5冊を紹介していきます。
1.「ゾーン」マーク・ダグラス著/パンローリング
「ゾーン」には、「相場心理学入門」という副題がついています。FXに特化した本ではありません。トレードの心理について書かれた本です。それは、FXや株や先物取引などのすべてのトレードに共通した課題があるからです。彼は繰り返しこう述べている。
- 一貫して利益を上げているトレーダーは非常に少ない
- そこには心理的要因がある
- 一貫して勝つ人間には,他人とは違った思考力がある
最初にこの本を読んだとき、まるで、わたしのことを言われているようで驚かされました。初版は2002年ですが、いまでも、まったく色あせていません。私が購入したのは、2008年発売の第7刷。相場で勝ち続けるために必要な心理的技術やトレーダー的思考法を教えてくれる本で、他の入門書とは一線を画しています。トレードの技術や戦術については、あまり書かれていません。ですから、そちらを期待していたら肩透かしを食らうかもしれません。でも、いちばん大切な「心のあり方」を学ぶなら本書が最適。なぜなら、FX取引で勝つには、「心のあり方」次第だからです。「ゾーン」とは何か? ここでは書きません。この良書を読んで、ご自分で「ゾーン」の意味を理解してください。きっと、FXに臨む姿勢が変わるはずですよ。すこし、むずかしい内容ですが、頑張って攻略する価値は十分にある良書です。
2「.悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術」ブレット・N・スティンバーガー/パンローリング
トレーダーが、リスクと向き合いながら、リターンを追求する際に直面する、難題や不確実性に立ち向かうためのアプローチを、101のレッスンとしてまとめた内容になっています。本書の目標は、自分で、自分のトレードのセルフコーチになること。
著者は「わたしの役割は,トレーダーを心理学という海から引き揚げることだ」といっています。本を閉じたままでは何も学べない。セルフコーチを有効に使えば、まちがった行動パターンを良い習慣に変えることができるのです。
私たちは、何度も同じ過ちを犯します。それを正すには、プロ野球の選手のように、来る日も来る日も基本練習をするしかないのです。まして悪い癖を直すには,さらに基本練習を繰りかえすしかありません。それができた人だけが「成功」というゴールにたどり着けるのです。
本書も、FXに特化した本ではありません。
ほんとうに難しいのは、良い習慣を長続きさせることです。
- マーケットは不規則だから、毎回正解することなどありえない
- 損失はトレードの当然の結果であり、食料品を買う費用と同じようなもの
- 心をコントロールするには、まず身体をコントロールすることから始めよ
- 正しいトレードは規則に従うことから始まり、やがてそれが習慣になる
- 内在化は繰り返しから生まれる
- 不安は、成長の道筋を示してくれる
- トレードはマラソンである
- 勝者は自分のペースで仕事をする
- 退屈を感じているあいだは平穏を感じることはできない
- 日誌をつけることは、基本中の基本である
この記事を書くために、この本を読みかえしていると、気づくことかたくさんあります。初心者にとっては、すこしハードルの高い本ですが、がんばって読めば、得るものがいっぱいあります。
著者は、さらにこんなことを言っています。
- 新米トレーダーのストレスは、ほとんど資金不足によるもの
- すくなすぎる資金で、欲張ってはいけない
- 自分の力量にあったトレードをすべき
- 収支トントンでOK!
- トレードで生計を立てようなどと考えるのは、はるか先である
- 聖杯など、どこにもない
3・「FXで勝つための資金管理の技術」伊藤彰洋・鹿子木健共著/パンローリング
「なぜ9割の人が負けるのか?」という問いかけから、「トレードで勝ち続けるために」まで、本書は一貫して資金管理の重要さを熱く伝えています。そして、資金管理の技術は,トレードの改善だけでなく、人生の期待値の改善にも役に立つと結んでいます。
なぜ9割ものトレーダーが負けるのか?
FXは20歳以上ならだれでも口座を開設することができ,すぐに取引を始めることができます。売買ボタンをクリックするだけで、簡単にエントリーができてしまう。
しかし、それは始める前から負けているのと同じ。レバレッジやポジションサイズ、損切りや利食いの方法など、何も知らなくてもエントリーできます。しかし、それはあまりにも無謀というもの。無知は大きなリスクです。簡単に始められる環境があるからこそ、簡単に始めてはいけないのです。だから9割の人が負けているのです。
どんな分野にあっても、真剣に取り組み、必要な知識や考え方を身につけ、味方につけた人だけしか生き残ることはできません。
著者は、資金管理こそトレードに勝つための最短距離、だといいます。あえていうなら、資金管理こそが聖杯だ、とまでいっています。
資金管理は家づくりの土台みたいなもの。土台がなけれは家は建ちません。
わたしが本書でいちばん影響を受けたのは、リスクについてです。
- 不確実性のリスク
- 先が読めないリスク
- 計算できないリスク
- ハイレバレッジのリスク
- リスクを放置するリスク
とりわけ、「リスクを放置するリスク」については、いまでも正しくできていません。自分で決めたルールを破ってしまうのです。つい、その場のふんいきに飲まれてエントリーしてしまい、それがうまくいかなくなると、なかなか損切りができなるなる。そこには二つのリスクが、はっきりと顔を出しています。ひとつは、ルールを破ったこと、もうひとつは、損切りができないこと。まさしく、これこそが「リスクを放置するリスク」にほかなりません。
著者は、「トレードを始めることは資金管理を始めることであり、トレードを学ぶことは資金管理を学ぶこと」だといっています。なぜなら、資金管理は自分でコントロールできるからです。
「トレードとは、手法やテクニカルではなく,資金管理で勝つゲーム」
わたしは、この名言をいつも肝に銘じています。
資金管理をマジメにやっても負けることがある。それがFXの世界でずが、資金管理をきちんと学んで実行すれば、勝つ確率は確実に上がります。9割の「負け組」から、一刻も早く卒業したいのなら、この本はおすすめです。
4・「FXプロの定石」川合美智子著/日本実業出版社
FX取引において、自分にいちばん欠けているものは何か? それは,プロ的視点です。プロとそうでない人の違いで、いちばんお大きいのは、決められたことをきちんとできるか、できないかということです。プロとの差はそれだけ。ですが、それが、とてつもない壁として立ちはだかってきます。相場の世界は平常心を失ったら終わり。相場がどう動くか、だれにも分かりません。だったら、「相場がこうなったら、こうする」というように、さまざまなシーンに合わせたシナリオをしっかり準備し、それに淡々と従うことが平常心を保つコツだ、と筆者は言います。結局、だれも頭と尻尾はとれないのだから、とれなかったといって、悔しがる必要はない。真のトレーダーは、何年間も生き残って、はじめて本物といえるのです。
トレードの禁じ手
- ポジションに理屈をつけてはいけない
- 途中でトレードスタイルを変えてはいけない
- 両建てをしてはいけない
- 金額で考えてはいけない
本間宗久翁の「三位伝」の教え
- 仁・チャンスが来るまでじっと待つこと
- 勇・チャンスが到来したら、流れに乗って果敢に攻めること
- 智・柔軟に対応して,考え方や気持ちを切り得ること
一喜一憂せずに、淡々と自分のトレードに徹すること。
じつは、これがいちばん難しい。
こういう視点から、この本は書かれています。プロの感覚がつかめたら、心強い武器になることでしょう。
5・「実践・生き残りのディーリング」矢口 新著/パンローリング
著者は、「もともとプロのディラー向けに書いたもので、一般人にはピンとこないところがあるかもしれないが、そんなところは読み飛ばしてください」とわざわざ断っている。プロの目線で書かれたものは、読みかえすたびに新しい発見があります。新しい発見があるのは、進歩した証拠です。この書物の中身が理解できるようになったということは、一歩プロに近づいたことでもあります。
リスクとリターンは,バランスシートのようなもので、リスクのない、夢のような儲け話などは存在しない。と、いきなり厳しい現実が突きつけられます。
「始めに言葉ありき」
シナリオを作ることが大切だといっています。言葉なしの,勘と度胸だけでは,相場観を検証することもできません。先のことはだれにも分からないなら、せめて、これから起こるであろう事態を、あらかじめ考えておきたいもの。シナリオがないと、失敗の原因すらつかめないからです。漠然とした感覚を、言葉によって具現化する。だから、「始めに言葉ありき」なのです。
「自分が見たいようにしか見ない」
耳の痛い話ですが、そのとおりだとわたしもおもいます。自分の都合いいように、すべての結果を歪めていたのでは、いつまでたっても成功はほど遠い。
投資と投機の違い
- 投資:ファンダメンタルズの数値を信じるところから始まる
- 投機:何が起こるか分からないことを前提とした、値動きのみを信じる
そして、相場は、投資を横糸に、投機を縦糸にして編み上げるタペストリーのようなものだと著者はいいます。
相場に勝利するには、方向が確認されてから動け、思いつきや思い込みで売り買いをしてはならない。
まさに、その通りです。しかし、分かっていても、なかなか実行できないのが凡人です。凡人から抜け出すには、この書は最適。プロ野球の野村監督の明言を引いて、興味深い例え話なども出てきます。どこまで理解できるのか、ぜひ挑戦してみてください。
まとめ
FXは、レバレッジ効果や24時間取引ができるなどのメリットがありますが、同時にリスクも高いです。FXをはじめるには、基礎知識や分析方法、資金管理や心理面などを学ぶ必要があります。そのためには、良質な入門書を読むことが必須。
FXは、だれでも簡単にできます。知識やスキルの裏付けがあれば、副業や投資として大きな収入源になるでしょう。ですが、くれぐれも、生半可な姿勢で取り組まないでください。大けがをしないように、これらの本をしっかり読みこんで、FXの世界を楽しんでください。