ほっちゃん_happyブログ

経験40年以上の現役一級建築士の"happy"提言

長期優良住宅の認定基準とメリット

長期優良住宅について、「戸建て住宅」「新築」「木造」にしぼって、経験40年以上の1級建築士が、やさしく解説していきます。

では、まいります。まず、長期優良住宅とは、どんな住宅なんでしょうか?

長期優良住宅とはどんな住宅?

長期優良住宅とは、国が定めた「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアした住宅のことです。長期にわたって安心・快適に住みつづけるために、省エネルギー性能や耐震性能など、より高い性能が求められています。長期優良住宅は、登録住宅性能評価機関で技術的審査受け、所管行政庁に申請することで認定を受けることができます。
長期優良住宅の認定戸数は年間10万戸程度。だいたい4戸に1戸は長期優良住宅の認定を受けていることになります。

つぎにメリットを考えてみましょう。

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅にはいろいろなメリットがありますが、ざっと以下のようなものがあります。

1・住宅ローンの金利引き下げ
2・税の特別措置
3・地震保険の割引
4・地域型住宅グリーン化事業
5・付加価値によって資産性が高くなる

ひとつひとつ説明していきますね。

1・まず、住宅ローンの金利引き下げについてです。

住宅金融支援機構の「フラット35S」Aプランの場合
    当初5年間は0.5%引き下げ
    6年目~10年目では0.25%引き下げ
金融支援機構「フラット50」では最長50年返済が可能です。
銀行の住宅ローン金利引き下げは、銀行によって対応が異なります。

2・つぎに税の特別措置を見ていきましょう。入居した時期や新築した時期によって対応が異なりますので注意しましょう。

[2023年12月31日までに入居した場合]
・所得税(住宅ローン減税):限度額の引き上げ
 控除対象限度額3,000万円→5,000万円
 (控除率0.7%、控除期間最大13年間、最大控除額455万円)
・所得税(投資型減税)
 標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%を所得税額から控除
[2024年3月31日までに新築された住宅]
・登録免許税:税率引き下げ
 保存登記        0.15%→0.10%
 移転登記[戸建て]    0.30%→0.20%
・不動産取得税:課税標準額からの控除額の増額
 控除額1,200万円→1,300万円
・固定資産税:減税措置(1/2減額)適応期間の延長
 [戸建て]    1~3年間→1~5年間
・地域型住宅グリーン化事業
 住宅1戸あたり140万円(最大)など

3・地震保険の割引について

耐震等級3の割引率は50%
地震保険については、お住まいの地域の市区町村役場や都道府県庁などにお問い合わせいただくとよいでしょう。

4・地域型住宅グリーン化事業ってなに?

長期優良住宅や低炭素住宅など省エネ性能や耐久性能に優れた木造住宅を建てると、工事を担当する事業者グループに対して、補助金が交付される制度。この事業は、各地で木造住宅の生産体制の強化および木造住宅の省エネ改修を促進することで、環境負荷を減らすため、また子育てを家族で支え合える三世代同居がしやすい環境づくりを目指すための事業です。

「グループ」とは、地域の中小工務店を中心に、原木供給→製材→建材→設計→施工など、住宅生産に関わる事業者で構成されています。そのため地域型住宅グリーン化事業を活用するためには、 国土交通省の採択を受けた「グループ」に所属する業者に家づくりを依頼する必要があります。

5・付加価値によって資産性が高くなる

長期優良住宅は、一般の住宅と比べて耐久性・耐震性・省エネ性能について国のお墨付きを受けているという点で付加価値があります。また、将来住宅を売却することになった場合、「長期優良住宅であること」がアピールポイントになり、資産価値が高くなる可能性があります。

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅にはメリットばかりではなくデメリットもあります。以下のようなものです。

1・申請費用が必要
2・建築コストの増加や工期の長期化
3・建てた後に維持費・定期的なメンテナンスが必要になる

ひとつひとつ説明していきますね。

1・申請費用として、必要なものは以下のとうりです。

・登録性能住宅評価機関への手数料
・図面や申請書類の作成料

2・建築コストの増加や工期の長期化

・耐震性能や省エネ性能がふつうの住宅より高いので、どうしても建築コストは高くなります。長期にわたって安心・快適に住みつづけるためのコストだと思いましょう。
・認定申請だけで約1ヶ月かかりますので、工期がその分だけ長くかかります。

3・建てた後に維持費・定期的なメンテナンスが必要になる

・ふつうの住宅でも維持修繕費はかかりますが、長期優良住宅はより高い性能を求めているので、定期的なメンテナンスが欠かせません。

長期優良住宅の認定基準には以下の項目があります

1・劣化対策
2・耐震性
3・省エネルギー性
4・維持管理・更新の容易性
5・居住環境
6・住戸面積
7・維持保全計画
8・災害配慮

それぞれ解説していきます。

1・劣化対策について

劣化対策等級は1~3まであり、長期優良住宅の評価をもらうには等級3の仕様にしなければいけません。

 等級3は、『構造躯体が3世代 (75~90年)もつ程度の対策
 等級1は、建築基準法が定める程度の対策
 等級2は、2世代(50~60年間)以上もつ程度の対策

建築基準法第1条には、
「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と書かれています。

つまり、建築基準法は、建物が、最低限度の安全性と国民の生命や健康を守るために定められた法律で、最低限度の基準であることが明記されています。よって、建物には、建築基準法に定められた基準以上のものを期待されていることになります。ただ守ればいいというものではないのです。


2・耐震性について

階数が2以下の木造建築物等で、壁量計算による場合は耐震等級3が必要になります。耐震等級3は、建築基準法レベルの1.50倍の耐震性があります。
耐震等級は壁量計算によって算定されます。
壁量計算とは、建物の耐震性能を判定するために用いられる計算方法。

耐風等級には触れられていませんが、最近の台風は強力になってきているので、2階建てには耐風等級2が望ましいと個人的には思っています。わたしは年間10棟前後の長期優良住宅を手がけていますが、すべて耐風等級2に設定しています。耐風等級2は建築基準法レベルの1.20倍の耐風性があります。
2階建てでは、耐震等級3よりも耐風等級2をクリアするのが難しい場合がありますので気をつけましょうね。
さらに、太陽光パネルを載せる場合は、壁量計算において屋根の荷重を「重たい屋根」として計算する必要があります。
わたしは、太陽光パネルを載せない場合でも「重たい屋根」として計算しています。こうしておけば、将来、太陽光パネルを載せても安心。
「重たい屋根」とは、瓦などのことです。最近よく使うガルバリウムは軽い屋根ですが、「重たい屋根」に設定して壁量計算をしてください。


3・省エネルギー性について

断熱等性能:等級5かつ一次エネルギー消費量:等級6が必要。
断熱等性能等級とは、住宅の断熱性能がどのくらいかを示す等級のことで、国土交通省が制定した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」において設けられました。一次エネルギー消費量とは、建築物のエネルギー消費性能の評価指標のひとつで、建物の利用に伴う直接的なエネルギー消費量(エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を含む)を指します。一次エネルギーとは、石油、天然ガス、石炭、原子力、太陽光、風力等といったエネルギーの元々の形態のことですが、エネルギー消費の最終局面では、石油製品(ガソリン、灯油、重油等)、都市ガス、電力、熱等の形態に転換されています。
一次エネルギー消費性能は、2022年10月1日から施行される認定基準の改正により、基準が設けられました。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の水準に相当するもので、一次エネルギー消費量計算を行う必要があります。

4・維持管理・更新の容易性

維持管理対策等級(専用配管)等級3とは、構造躯体や仕上げ材に影響を及ぼすことなく、点検、清掃及び補修ができるなど、配管等を工夫する措置を講じた場合に該当する等級。たとえば、コンクリートの床下に配管を埋め込まないようにすることが、これにあたります。床下点検口や天井点検口も必要。

5・居住環境について

居住環境とは、住宅が良好な景観をそなえ、かつ地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。
地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること。
災害時においても安心して生活できるよう、耐震性能や防火性能なども認定基準に含まれています。

6・住戸面積について

一戸建ての住宅:75 ㎡以上(階段部分を除く)
少なくとも1つの階の床面積が40 ㎡以上(階段部分を除く面積)
床面積は、地域の実情を勘案して所管行政庁が別に定める場合があります。

7・維持保全計画について

以下の部分・設備について定期的な点検・補修等に関する計画を策定
・住宅の構造耐力上主要な部分
・住宅の雨水の浸入を防止する部分 
・住宅に設ける給水又は排水のための設備
・政令で定めるものについて仕様並びに点検の項目および時期を設定
維持保全計画をもとに定期点検を行う義務があります。 
具体的には、該当する年ごとに定期点検シートを作成し、仕様及び点検項目をチェックし、評価していきます。さらに以下のことを考慮する必要があります。
・維持保全の期間は30年以上
・点検時期の間隔は10年以内
・地震・台風時に臨時点検を実施する
・点検の結果を踏まえ、必要に応じて調査、修繕又は改良を実施
・住宅の劣化状況に応じて内容を見直す

8・災害配慮について

自然災害による被害の発生の防止又は軽減に配慮されたものであることが求められます。具体的には、耐震性能や耐風性能、避難経路や避難場所の確保などが挙げられます。

長期優良住宅の認定手続きの流れ

認定手続きから工事完了後の基本的な流れは以下のとうりです。

1・長期優良住宅の建築及び維持保全に関する計画を作成
2・着工前に「長期優良住宅確認申請」を登録住宅性能評価機関へ提出
3・確認書の交付
4・認定申請書(第一号様式)を所管行政庁に提出
5・認定・着工(認定申請書を提出すれば着工できる)
6・工事完了・工事完了届
7・維持保全計画に基づく点検
8・必要に応じて調査を行い、適切な修繕および改良を行う
9・記録の作成・保存

長期優良住宅に対するQ&A

Q1・長期優良住宅の認定申請には、どれくらい費用がかかりますか?

A1・登録住宅性能評価機関への手数料を含めて、合計で20~30万円程度かかります。

Q2・定期点検は自分で行うことができますか?

A2・できます。ただし記録を作成し、保存することが必要になります。

Q3・検査不適合で補修工事が必要になった場合、修繕は必須ですか?

A3・点検で補修が必要と判断されたら補修しなければなりません。

Q4・太陽光発電システムは必ず載せなければならないの?

A4・いいえ。長期優良住宅の認定取得には、太陽光発電は必要ありません。太陽光発電を設置することで得られるメリットはすくなくなっていますが、電気料金の高騰が今後も継続する場合には、発電した電気を利用する太陽光発電を導入すれば、電気代高騰の影響を受けないですみます。メリットかもしれませんよ。

Q5・リフォームは可能ですか?

A5・はい。可能です。ただし、耐震性能や省エネ性能など、長期優良住宅としての性能要件は満たなければなりません。専門家や業者に相談してください。

まとめ

長期優良住宅は、長期にわたって安心・快適に住みつづけるために、省エネルギー性能や耐震性能など、より高い性能が求められています。住宅ローン減税などのメリットもありますが、なによりも付加価値によって資産性が高くなることに注目したいと思います。もちろんコストアップになるなどのデメリットもあります。しかし、長期優良住宅はメリットのほうがぐっと多いので、おすすめの制度です。長期優良住宅の認定戸数は年間10万戸程度。だいたい4戸に1戸は長期優良住宅です。ぜひ活用してみてください。